知らないと損、いきなり「返済して」の正しい返答

こんにちは。横山幸一です。

「この言葉を知っているだけで、銀行との交渉は楽になります。」
そんな便利な言葉があるといいですね。

実は、「あるんです!」

 

取引先のいきなりの倒産や、大型契約を失ったとき「売上が大きく低下する」という状況になった場合を想像してください。

多くの社長は、その事実を銀行にすぐには伝えようとしません。

 

なぜでしょう?

 

理由は簡単です。

 

伝えてしまうと「現在、融資しているお金を返済して欲しい」と言われると思うからです。

でも、それは大きな間違いなのです。

 

経営を行っていく上で、大きなマイナスとなる状況になってしまったときには、真っ先に、銀行に報告するべきなのです。

そういった報告をした結果、銀行から「すぐに返済して欲しい」と言われたとしても、それは突っぱねることができます。

あなたには「期限の利益」があるからです。

 

「期限の利益」というのは、「期限が定められていることによって債務者が受ける利益です。


例えば、借金の返済期限が設定されている場合、債務者は期限が到来するまでは返済する義務はなく、また返済を求められることもない」(出典:デジタル大辞典)というものです。

 

簡単に言い換えますね。

きちんと利息と契約書通りの返済を行っていれば、債権者が返済を求めても、返済期限が来るまではそれを拒否できるという権利のことです。

ただし、「期限の利益」がなくなるようなケースも確かにありますよ。

 

「期限の利益の喪失」と言うのですが、この「期限の利益の喪失」も「当然喪失事由」と「請求喪失事由」に分かれます。

「当然喪失事由」とは「一定の事由が生じた場合は当然に期限の利益を喪失する事由のこと」で、こういったことが起こると、すぐに返済しなくてはならなくなります。

当然喪失事由は、以下の通りになります。
1、支払の停止または破産、和議開始、会社更正手続開始、会社整理開始
もしくは特別清算開始の申立があったとき

2、手形交換所の取引停止処分を受けたとき

3、債務者または保証人の預金その他の金融機関に対する債権について仮差押、
保全差押または差押の命令、通知が発送されたとき

4、住所変更の届出を怠るなど債務者の責めに帰すべき事由によって、
金融機関に債務者の所在が不明となったとき

 

もう一つの、「請求喪失事由」とは「一定の事由が生じた場合に、債権者の請求によって期限の利益を喪失する事由のこと」で、銀行から返済の請求があれば、すぐに返済しなくてはならなくなります。

請求喪失事由とは、以下の通りです。
1、債務者が債務の一部でも履行を遅滞したとき

2、担保の目的物について差押、または競売手続の開始があったとき

3、債務者が金融機関との取引約定に違反したとき

4、保証人が前項または本項の各号の一にでも該当したとき

5、前各号のほか債務保全を必要とする相当の事由が生じたとき

 

法律の文章はややこしいですね。注意するのはすぐ上の5番です。

「5、前各号のほか債務保全を必要とする相当の事由が生じたとき」の部分です。

この部分が、銀行の裁量部分になるのですが、あまり、この部分を乱用してしまうと、銀行は不利な状況に立たされる場合が多いため、あまり、無理は言わないのが普通です。

銀行から「すぐに返済してほしい」と言われた場合は「返済しなくてはいけない」と思って、取引先や親族などから資金を調達して返済しようとしますが、そんなことはする必要はありません。

 

「それは、期限の利益の喪失事項になるのでしょうか?」と尋ねてみてください。

 

それを言うだけで「この取引先は、法律関係に詳しいぞ。あまり無茶を言うと、逆に噛みついてくるな」と思われるために、銀行の担当者は面倒なことは避けたい傾向のあるので、それ以上深追いしなくなります。

 

「そんなことをすれば、次に貸してくれないようになるのではないか?」と思うかもしれませんよね?

でも、期限の利益を喪失していない債務者に対して返済を求めるのですから、その銀行は債務者に対して、次の融資をするつもりは元からありません。
気をつかう必要はないわけです。

 

とは言え、特に地域密着型の銀行であれば、基本的には債務者の味方になろうとしてくれます。

経営に大きな影響を与えるような事が起きた場合は、報告を先送りにするのではなく、先に報告や相談をすることで、救済措置を一緒に考えてくれますよ。

まず、報告・相談することをおすすめします。

 

【注意】都市銀行や大手地方銀行では、あまり、そこまで親身になってくれないことが多いので、気をつけてくださいね。