こんにちは。横山幸一です。
今回のこの話は、あまりにも生々しいため、一部をフィクションとさせていただきます。
基本的に、銀行の人間というのはプライドが高いです。大きな銀行であればあるほど、その傾向は強くなります。
都道府県内でシェア1位となっている地方銀行の支店長の中には、鼻持ちならない人格の人もいます。
そんな支店長は、自分の意に添わない融資先に対して「嫌がらせ」をします。
以前には、こんな相談がありました。
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「V銀行(ある県の地方銀行)の担当者が、良い提案を持ってきたので、5年ほど前にメイン銀行だったX銀行から、V銀行に2千万円を借り換えしました。
その提案をしてくださった支店長とはとてもよい関係を作れており、そこから、6か月間の短期貸し付けですが、1億円まで貸出額を増やしてくれました。
そのおかげで、資金繰りが劇的に改善し今期は黒字転換することができました。債務超過も、あと6か月程度で解消というところまでこぎつけました。
でも、今年に入り担当者が替わりました。
以前の担当者は「打てば響く」というような感じで、とても優秀でした。
でも、新しい担当者は優秀の反対で「短期資金を2千万円貸して欲しい」と依頼したにもかかわらず、なかなか返事がありませんでした。
結局、背に腹はかえられず、地元のQ銀行から借り入れました。
V銀行担当者にもそのことを伝えていたにもかかわらず、支店長まで伝わっていなくて、支店長がへそを曲げたと担当者が言ってきました。
今年の5月半ばに、V銀行担当者から「今まで、継続していた手形貸付1億円(6か月更新)の審査は支店決済で行っていましたが、7月末更新分から、本部決済になる」と言われたのです。
借り入れている立場としては、支店決済であろうが本部決済であろうが、今までのように継続してもらえれば問題ないので「では、継続の申請をお願いします。いつものように必要書類はお渡しします」とのことで継続融資を依頼しました。
しかし、期日の1週間前になっても、何の連絡もありません。
どうしたらよいでしょう。
万が一、ギリギリで『手形更新できません』ということになると、会社としては返済資金なしです。
このような場合、対応があまりにもひどいということを金融庁などに申請する窓口などはありませんか?
実際に申請するかどうかはわかりませんが、今後のために教えてください」
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このような銀行の行為を「優越的地位の乱用」と言います。
それをさせないために、金融庁は銀行に対して「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」に基づいて、監督と指導をしています。
この「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の中に、
「2、顧客の要望を謝絶し貸付契約に至らない場合、これまでの取引関係や、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的に応じ、可能な範囲で、謝絶の理由等についても説明する態勢が整備されているか。」
という監督指針があるのです。
例として、
「例えば、長期的な取引関係を継続してきた顧客に係る手形貸付について、更なる更改を謝絶する場合、信義則の観点から顧客の理解と納得が得られるよう、原則として時間的余裕をもって説明することとしているか。」
というのがありますが、正に、今回のケースですね。
こういったケースでは、この監督指針について、銀行にアピールすることで、融資が円滑に進むということはよくあります。
今回のケースでは、あまりにも支店長が大人げない立場をとっていたので、支店長ではなく、直接、本店の「コンプライアンス統括部」というとこころに連絡してもらいました。
「7月末期日の手形貸付について、1か月以上前に延長依頼しています。1週間前になっても、何ら返事をいただけていません。今になって、否決になった場合、手を打てません。
「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針 平成28年6月」の
「II 銀行監督上の評価項目」
「II -3 業務の適切性」
「II -3-2 利用者保護等」
「II -3-2-1 与信取引等に関する顧客への説明体制」
「II -3-2-1-2 主な着眼点」
(6)取引関係の見直し等の場合の対応
2、顧客の要望を謝絶し貸付契約に至らない場合、これまでの取引関係や、顧客の知識、経験、財産の状況及び取引を行う目的に応じ、可能な範囲で、謝絶の理由等についても説明する態勢が整備されているか。」
とありますが、御社は、その対応を全くされていませんね。
申し訳ございませんが、御社の対応が、監督指針に沿って行われているのかどうか、金融庁に対し、今回の顛末を説明した上で、問い合わせたいと思っています。
その前に、本部サイドのお答えをいただきたいので、連絡させていただきました。
本日中に回答をいただけない場合は、明日、金融庁に連絡させていただきますので、何とぞ、ご回答のほど、よろしくお願いします。」
と社長に言ってもらいました。
その電話を切ってからすぐに、V銀行の担当者から電話がかかってきました。
先ほど、「コンプライアンス統括部」への電話の内容を伝えると、支店長が慌てて訪問してきたのです。
今までの高圧的な態度からは考えられないほど、低姿勢になり、「すみません。今回の融資に対しては、何とか継続させていただきます。金融庁への報告は、何とぞご容赦ください」と言ってきたのです。
社長は、まだ怒っていたものの銀行とケンカをしてもしかたがないので、そこは納得して6か月の延期をしてもらうことができました。
このように「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の中の、上記部分を少し知っているだけでも、無茶な嫌がらせから身を守ることができます。
「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」と「金融庁への報告」は、押さえておくことをおすすめします。
ちなみに、7月末に継続した手形貸付ですが、その10日後に、他行に借り換えすることができました。支店長に嫌がらせをされ始めたときから、準備をしていたのです。
「優良な融資先を肩代わりされた」ことと「金融庁への報告につながる顧客対応を行った」ということでしょうか、その3ヶ月後に、当該支店長は、関連会社に出向ということになってしまったそうです。
金融機関についての知識が乏しいと、その乏しさを利用して、自分たちの都合の良いように好き勝手言ってくる銀行員は確かにいます。
しかし、しっかりと知識を持って理論武装してくる顧客には、あまり無理難題は言ってきません。